こんにちは、
私は、ここ7、8年、情報家電のユーザ経験デザイン(UX)の仕事を中心に活動してきましたが、もともとは建築デザインとメディアアートの活動をしていました。街をもっとインタラクティブに、人に反応する環境にしたい、という思いからこのようにキャリアを転々としてきましたが、ここ数年は、具体的に街の空間を作る仕事を手掛けたいと、準備をはじめました。
今は丁度クリスマス前で、インタラクティブなイルミネーションやプロジェクションマッピングなど、街の空間と私たちがやりとりできるようなエンターテイメントがニュースになっています。
一方で、こういった技術やテクニックが、日常の街の一部としてどう役立つのかは、まだ未知数です。ここに私は挑んでみたいと思います。
今日はひとつ、スマートシティを、スタートアップ企業のやりかたを参考に作り上げようという記事の翻訳を読んでいただきたいと思います。スマートシティとは、ここ数年は日本の状況もあって、電力グリッドなどのインフラについてのことという印象がありましたが、この記事では街に住む人の生活に焦点を当てています。
ではどうぞ!
以下は、この記事を私が翻訳してみたものです。
Smart Cities Should Be More Like Lean Startups
by Boyd Cohen
http://www.fastcoexist.com/1680269/smart-cities-should-be-more-like-lean-startups
動きの早い企業の最新の理論から、未来を目指す街は何を学べるか?
まず、Eric RiesのLean Startupを読んでいない人に説明すると、その基本コンセプトはこうだ:スタートアッププロセス(ベンチャー企業をはじめるときのプロセス)について今までなされてきたことは、すべて間違いだ。長いビジネス計画を書いたり、初期の資金を集めたり、1年くらいかけて初期の試作品を作ったり、、これらの代わりに、最小限の実行可能な製品(minimal viable product, MVP) を中心に、繰り返し試したり、継続して学んだりするようなやりかたを支援すべきなのだ。早い時期の顧客の反応に応じて製品、サービス、またはビジネスモデルを継続的に調整したり、また時には大きく変更することで、スタートアップ(ベンチャー企業の初期のこと)はその成功の見込みを良く出来るし、もし失敗したとしても、より速く、より損害を少なく失敗できることになる。
私は過去数年、持続可能な都市と、スマートシティに没頭してきた。そういうわけで、Lean Startupとスマートシティの概念をどうやったら結び付けられるか、自然と考え始めたのだった。
私にとって、Lean Cityというアイデアは、Smart Cityの考え方と相補的(互いに補いあう)ものだ。Lean Startupの原理は、発明家は、自分が作る最小限の実行可能な製品(minimal viable product, MVP)への反応についての仮説をもち、さらにその結果を綿密に計る準備をしておく必要がある、と提案している。Smart Cityのしくみはその効果を向上するために、センサーとそのリアルタイムなデータを使って主要な計測をする場合が多い。たとえば、最近私は一千万のセンサーが22万5千人しか住む計画のないポルトガルの新しい都市計画で使われるという記事を書いた。
(記事は http://www.fastcoexist.com/1679915/baking-innovation-into-new-smart-cities)
私は”センサーとデータの豊富な使用例”以上の、より広いものとしてSmart Cityの定義を考えている。センサーの価格の低下と使用の容易さの増大は、世界中のSmart Cityでその重要さを増してゆくだろう。このトレンドは完全にLean Startupの原理に沿っている。
もうひとつのLean Startupsのキーになる概念は、最小限の実行可能な製品(minimal viable product, MVP)の創造と繰り返しだ。最小限の実行可能な製品(minimal viable product, MVP)は、最適化された最小限の製品またはサービスで、発明に対して使用者がどう反応するかについての仮説を検証するために開発されるものだ。
都市はMVPをもっと使うようになる。もちろん常識的にはそれは”パイロットプロジェクト(試しに運用する小規模な計画)”と呼ばれるだろう。数ヶ月前、私はサンノゼのデモプロジェクトについて記事を書いた。地域の持続的な経済の発展を街が発明し、または支援するために、パイロットプロジェクト(MVP)たちを合理的に使えないかどうか、探ったのだ。
(記事はhttp://www.fastcoexist.com/1679261/how-can-you-build-a-smart-city)
Lean Startupsの2つの教義:仮説のテストと計測、そしてMVPの使用、を、SmartCityの文脈にすばやく応用してみよう。
今年の3月まで、私はMount Pleasantという、住宅地域に商業施設がある幹線道路がついた、バンクーバーの中心部から自転車で数分の場所に住んでいた。先見的な市長であるGregor Robertsonのもとで、バンクーバーは2020年を目指して世界の最もグリーンな都市を目指している。
Robertson市長のチームは、車に対して歩行者と自転車にのる人への優先度を上げる総合的な取り組みを続けている。この取り組みはもちろん誹謗者も生んでしまう、むろん私はその一人ではないけども。バンクーバー中心部の駐車スペースをなくして、主な橋に増大する自転車交通のためのレーンを作る以外にも、市はMVPを使った取り組みをしている。Mount Pleasantでは、商業地域の幹線道路でにある2つの駐車区画を公園のベンチに置き換えた。街路とコミュニティの活性化を期待してのことだ。
もしバンク=バー市がこのプロセスにLean startupの方法論を応用するとしたら、こんなふうになるのではないだろうか。
01:仮説を作る:
規則的、戦略的に市全体の駐車スペースをなくし、緑の空間またはコミュニティの空間に置き換えることで、同じブロック(日本の感覚でいうと、何丁目という単位?)のなかでの居住者同士の交流の量を増大させる。という仮説。
02:仮説を検証するための測定の基準を決定する:
その街路にいる住民の数を、このテストプロジェクトの前と後で比較する。1日のなかで違う時間に、週日と、週末に。住民の数だけではなく、いる時間の長さも、プロジェクトの前と後で比較できるだろう。という測定基準
03:MVPを開発する:
この計画の場合、市はとても低いコストで、少ない影響を与えるテストプロジェクトを作る良い仕事をしているといえる(うまくいくようにという希望のもとに市全体に1000個のベンチを作ってしまうよりずっと良い)
04:結果の測定:
02で決めた測定基準に基づいて、安価なセンサーを用いたり、観察者を使ったり、または携帯電話用アプリを使ったりして、測定する。
05:繰り返し:
04での分析を梃子に、同様のモデル(考え方)で実験する。たとえば同じ場所で、しかしそこを運動用の公園器具を置くような使い方にしたり、または小さな芸術の展覧会をしてみたら、どうなるだろうか?
06:繰り返しの結果を測定して、さらにほかのMVPを作ってみる。
一度このプロセスがコミュニティ内の交流のゴールに到達したら、おそらくそのプログラムを他の近隣地域に広げる時だろう。
Smart Cityは納税者からのお金と資源の効率的な利用を目指すものだ。Lean startupの思考を応用するのは、都市居住者の生活の質の向上と効率化に達するための有効な道具になるだろう。これはさらに良いサービスの獲得にも繋がるだろう。役所の仕事を減らしながらも、小さな企業が町の発明に参加し、地域の発明を促す可能性がある。しかしこれはまた別の仮説で、検証し繰り返されるべきものだ。
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最後まで読んでいただきありがとうございました!
おまけに、私が2013年に取り組んだ、バーやレストラン向けのインタラクティブな照明Limelightを紹介ビデオをお楽しみください。
では、皆さん良いクリスマスとお正月を!
藤村憲之